~番外編~
「インスタ疲れ」した
あなたのために
インスタに疲れれば○○が撮られる?
「SNS トレンド」をリサーチする中で、フォトジェニックを謳ったモノ・コトに関する記事が収集される一方で、「インスタ疲れ」「フォトジェニック疲れ」といった現象に関する記事も散見された。【レポート:調査員K】
確かに、他人の評価ばかりを考えて写真を撮っていると、ふと我に返ったときむなしさを覚える瞬間もあるだろう。また、「映え」があらかじめ期待されたものを容易に撮れることに、どこか「撮っている」というより「撮らされている」と感じる人もいるだろう。「自分自身の価値観に従って美しくかわいいものを撮りたい。でも、簡単に撮れてしまうのも嫌――。」そんな人が今後撮るようになるものは何か。議論の末、私たちが導き出した結論は「カワセミ」だ。

カワセミを撮りたい!
「青い宝石」とも呼ばれるカワセミ。その配色の美しさもさることながら、小さな体と長いくちばしといったフォルムのバランスもかわいらしい。枝の上で、水の中の獲物をじっと見つめる姿を見て、「いいね!」と思わない人などいないだろうし、また何よりそんな姿を皆、撮りたくなるはずだ、きっと。カワセミは綺麗な水辺にしか生息しないが、近年の水質改善により、都内でも見かけることが増えたという。
我々調査員は、新聞、業界紙、雑誌、WEBなどのメディアにおいて、2,000を超える多様なテーマに関する記事をシステムと目視によって見つけることを生業(なりわい)としている。ある特定の種類の鳥を見つけることなど、生息する池の情報さえわかれば難しくはないはずだ。

池のそばのカワセミぜったい撮る大作戦。
今回、事前に四か所ほどカワセミの目撃情報がある池のある公園を調べ、半日かけてまわってみることにした。ただ、インスタ映えしそうな写真が早々に撮れてしまえれば、目的を果たしたことになるわけで、四か所すべてをまわるつもりはない、いや「なかった」。全部まわるつもりなかったんです、本当に。
<第一の池> 弊社から約800m
調査の当日は、ちょうど都内で桜が開花した時期。桜を背景にしたカワセミが撮れるかも、などと期待を膨らませながら、会社から歩いて十数分。最初の池がある公園に到着。特別広いわけではないが、とても風流。
こんなところで撮れたら、としばらく待っていたが、カワセミが姿を現すことはなかった。でも、これでよい。さすがに最初からうまくいくとは思っていない。電源のオン/オフボタンの位置さえ忘れていたほど久しぶりに使ったデジカメで、シジュウカラを撮れただけでよしとしする。

<第二の池> 弊社からの距離約1500m
一つ目の池のある公園から歩くこと数分。二つ目の公園は静かで都会らしからぬ落ち着いた雰囲気。池の周りを歩く。スマホも見ず、イヤホンもせず、ゆっくりと公園を歩く。非常に贅沢な時間。それはそれでいいのだ……。結局、池を何度も周回したものの、カワセミは見つからず。企画の段階から薄々気づいてはいたが、もう認めなければならない。どうやらカワセミを見つけるのは思っているより難しいことだと……。

<そのときは突然訪れた!>
二つの池で、撮影どころか、見かけることすら出来なかった――。春の陽気がかえって心に影を落とし、第三の池のある公園に向かう足取りも重くなる。そんなとき、ふと数人の若者が川のそばに立っているのに気付く。私のデジカメとは規格の異なる、本格的なカメラで橋の下を撮影している。
これは、もしや。私も彼らの視線の先にカメラを向け、シャッターを切ると……。


ゴミを撮っているニッチな趣味の若者たちに話しかけてみると、ゴミを撮っているのではなく、橋と川の情景をアニメーション作成の参考に撮っているとのこと。カワセミではなかったことへのショックと、風変わりな若者たちではなかったことへの安堵がない交ぜになりつつ、三つ目の池のある公園へ向かう。
<第三の池> 弊社からの距離約7km

これまでの公園は、会社から歩いて行ける距離だったが、第三の池がある公園は高田馬場駅から最寄り駅まで電車で30分、さらに駅から公園までは20分ほど歩いたところ。遠くの公園を選んだのには理由があり、ここはそもそも自然との触れ合いを目的として設立された公園であり、カワセミの目撃情報数も他の公園の比ではなかった。
公園の入り口から目に入った池は、周囲を覆う木々によって適度な影を落としている。なんとも「カワセミ映え」する池だこと!私はここで撮る!
カワセミがいつ訪れても撮れるよう気持ちを整えながらその時を待つ。待つ。待った。だいぶ待った。かなり待った。待ったけど来ませんでした。

<第四の池> 弊社からの距離約10km
駅まで歩いて戻り、再度電車に乗って移動。四つ目の池のある公園はほぼ埼玉県。ここからは写真のダイジェストのみで振り返りたいと思います。
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カラス。黒い。かっこいい。 -
池。広い。
日が暮れてきているのが伝わればいいなと思います。
カワセミ撮る大作戦失敗の原因を「鳥の博物館(@千葉県我孫子市)」に聞いてみた。

カワセミを見つけられなかった原因はどこにあるのか。後日、専門家の意見を聞きに、「鳥の博物館」を訪問した。
『やはり事前調査が足りなかったのではないでしょうか。プロのカメラマンも初めての場所では、撮影することよりも餌場の場所や姿をあらわす時間など調べることを優先しますよ。カワセミは高度経済成長期の頃こそ見られなくなりましたが、わりと身近なところにいる鳥です。それこそ「鳥の博物館」の前にある手賀沼であれば、ぐるりと回れば少なくとも「キィー」という鳴き声は聞くことが出来ます。日本にいる鳥は地味な色のものが多いですが、カワセミはとてもきれいで人気がありますよね。「インスタ映え」はするのではないでしょうか(笑)ただし、巣の写真を撮ろうとあまりに近づいたり、自然の生態を脅かすようなことはしないでくださいね。』(学芸員・斉藤安行さん)
バードウォッチングには鳥の生態や環境、観察する場所に関する知識と経験が重要だ。それは弊社の業務において媒体の知識や読む経験を獲得することで、速く正確なモニタリングができるようになるのと同様なのかもしれない。カワセミは撮れなかったが、なんとなくいい感じの結論に至ったので、今回の企画は大成功でした、ということにします!
おまけ:カワセミの実物を撮影できなかった人たちのために
「カワセミは撮りたいしインスタにあげたいけど、なかなか難しそう……。」本記事を読んでそう思ってしまった人もいるに違いない。そんな人には前述した鳥の博物館で販売している「カワセミのペーパークラフト」を購入しよう。これさえあれば、どんな仕事場であっても、清らかな空気漂う池のほとりにいるような気分になる、かも。

レポート:調査員K
会社概要
- 会社名
- 株式会社 内外切抜通信社http://www.naigaipc.co.jp/
- 業務内容
- 各種メディア(新聞、雑誌、WEB、TV、Twitterなど)の情報収集、露出調査、コンテンツ制作、掲載記事の広告価値算出、分析業務
- 設立
- 1968年(創業1939年)
- 従業員数
- 93名(パート・アルバイトを含む)
- 代表取締役
- 近藤義昭
- 住所
- 東京都新宿区大久保3-14-4 毎日新聞社早稲田別館
- 加盟団体
- 国際切抜通信社連盟(FIBEP)
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